朗読会「2020 生きる」 −失ったもの 失わされたもの

 2020年10月14日(水) さいたま市民会館うらわ ホールにて
 
 構成・演出 浅川安子  
 
 制作     中村淳子・藤井裕子

 打楽器    林みづほ


原爆詩
 うめぼし(池田ソメ)
 無題(佐藤智子)
 永遠のみどり(原民喜)
 生ましめんかな(栗原貞子)

ゆき女聞き書き

 石牟礼道子『苦海浄土』より

樹上の人

 いとうせいこう『想像ラジオ』より

ドキュメント −今、コロナ禍を生きる

 日記から(作家 綿矢りさ)
 手記(朝日新聞記者 今村優莉)
 ドイツ メルケル首相のテレビ演説
 声明 日本ペンクラブ
 新聞記者 今、アフリカでは
 寄稿 神宮司元住職(高橋卓志)
 投書から
 全国からの短歌
 子供たちの「あのね}

生きるということ、いのちということ

 声の会、今年の公演は、本来は『楢山節考』でした。しかし、このコロナ禍で練習もできず、舞台の見通しも立たずで、来年まで延期せざるを得ませんでした。では声の会は、こんな窮状にただうろたえるだけなのか・・・。それぞれの思いが噴き出るように、朗読でやれることはあるのではないかと思い至りました。みんないたんで縮こまってしまっている、傷ついて途方にくれている、こんな時こそ結ばれあうこと、共感し合うことがとても大事と思われました。
 生きるということは? いのちということは? とても本質的な問いが私たちにつきだされています。すぐの答えはないけれど、感じ方はそれぞれにある。そんな感じ方を通して朗読でつながりあえたら幸いです。

 構成・演出   浅川 安子


『苦海浄土』石牟礼道子

 水俣病を、同じ不知火海のほとりで見るとき、患者でもない漁民でもない石牟礼氏は、じっとしていられず、思わず、まず坂上ゆき女を見舞ってしまった。そのときから患者への長い長い寄り添いが始まる。詩人石牟礼氏が全身で汲み取ったものは、単なる聞き取りなどではおさまりきれない魂のゆさぶられであった。

『想像ラジオ』いとうせいこう
 東日本大震災以来、幾多の文学作品が生まれた。その中でもこの作品は、クリエーターとして幅広く活躍するいとう氏の代表作としてベストセラーにもなった。「想像」力がやせ衰えているような現代、私たちは死者たちの声を聴きとれているのか。赤いヤッケを着て樹上にとどまったままの男を通して、この作品は生きること、死ぬことを深く私たちに問いかけてくる。


ひとこと・ヒトコト・一言(出演者より

●「自分が生きている間にこんなことが起きるなんて・・・」東日本大震災の津波と福島第一原発の爆発事故の映像が脳裡を離れない。そして今年のコロナ禍。この上に戦争だけは避けたいもの・・・。行動制限がある今、朗読を通じて感情が豊かになれていることを嬉しく思う。(石垣幸子)


●昔も今も、何かに制約されると、普通だったことが普通じゃなくなる。当たり前だったことがそうでなくなる。でもその中で、新しい発見・見いだす力を、そして互いに信じ、助け合い感謝する気持ちを、私たちは持っている。だから、今がある。そしてこれからも生きる。(鬼久保千春)



●「ゆき女聞き書き」の壮絶さにとてもショックを受けました。石牟礼道子さんの真摯で優しい眼差しを何とか表現せねばと思います。コロナで閉じこもりがちの今、こんな時だからこそ読める語れる場が持てたことに感謝です。そして聴きにきてくださるお客様に大大感謝!(黒澤道子)



●公演延期が決まってからの代表浅川さんの動きは素早かった。コロナ禍であっても「できる範囲で活動していくこと。そしてそれを伝えること」を目標に無料の朗読会を企画するという。私の出番は5分くらいだが、練習の日々を皆と過ごし、作品を身近にすることで力をもらった。会場でもきっと、その力を伝えられる! 喜びが重なった。(関根洋子)



●今回取り上げた一連の作品を通して、改めて思いました。「私たちは痛みの歴史とともに生きている。過去の過ちや災いの事実をしっかり受け止め、そして今起きているつらい現実を直視していきたい・・・」コロナ禍での様々なことも、次世代に伝えていかなければ、と。(高橋雄二)



●現在、コロナ禍で私たちはまったく稀有な生活を経験している。『楢山節考』が今年上演できなかったことは残念であるが、今回の朗読会のテーマはタイムリーに「今」を「生きる」私たちに力を与えてくれるものだと思う。(瀧川文子)



●薬もワクチンもまだなのに、日常が戻りつつあるのは不思議だ。私たちは何にでも慣れてしまう。今まさに苦しむ人がいて、明日はわが身かも、とわかっているのに。宙ぶらりんの気持ち。開け放った体育室の窓から金木犀の香りが流れ込んできた。マスクをずらして大きく息を吸った。(中村淳子)



●70年代半ばから障害児・者運動に関わっていた私は、ある時、「怨」という一字を大書したムシロ旗を掲げて官庁街をデモ行進する水俣病患者さんと支援者の人たちに遭遇しました。宇井純さんが開講していた東大自主講座で、石牟礼道子さんのお話も聴きました。かつての時間を今に繋ぎたいと願いながら、朗読します。(野辺明子)



●日本中、世界中が身近に押し寄せる感染の恐怖とどう戦うか試されている気がします。<withコロナ>ご一緒したくはありませんが。うまく向き合うしかありませんね。私としましては、まず、朗読を楽しむことから始めます。(藤井裕子)



●腕に止まった蚊を、パシッと叩いた。今この蚊の命は終わった。私だって何時見えない手に叩かれるかわからない。事故・災害・コロナ・・・。今、生きている、生かされているのが奇跡的なことなのかもしれない。だから自分らしく、遠慮しないで生きよう。声の会と出会って良かった。(松本真知子)



●コロナ禍で先の見えない閉塞感の中、今までも原爆・公害・震災等で多くの命を失いながらも強くたくましく生きてきた人たちの、ほんの一部でも伝えたい。また、コロナ禍の中で子供たちの今の声も。(村田里美)



林みづほ・・・東京藝術大学打楽器専攻卒業。ハンドパーカッション、電子パーカッションメインにアーティストライブサポート、NHK ラジオ番組、企業イベント、ライブイベント、アニメやCM等各種メディア音源レコーディング、打楽器指導、ワークショップ講師など活動している。




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