リーディングドラマ「放浪 林芙美子抄」

 2010年10月30日(土) 彩の国さいたま芸術劇場小ホールにて
 第6回《声の会》自主公演を上演しました。
 原作 林芙美子(『風琴と魚の町』『放浪記』『清貧の書』『魚の序文』)より
 構成・演出 浅川安子  出演者 17名




 芙 美 子 様 御許へ

 芙美子様、お墓の中で相変わらずお元気なのでしょうね。先日、《声の会》のメンバーで、あなたのお住まいだった落合の記念館とお墓をお訪ねしました。暑かったのでアイスクリームがおいしかったこと。ふっと思いましたよ、あなたならどんなにうまがって、舌を打ったろうって。

 あなたは戦争協力者だったのか、反戦者だったのか。希望の人なのか、虚無の人か。極貧の生い立ちと、流行作家になってからの贅沢。男に捨てられたあなたと、寛容な夫を持ちながらスリリングな恋にも走ったらしいあなたと。健啖家のあなたのことです。全部全部味わい尽くして、うなぎを食べた翌日ころっと逝ってしまった。きっとあなたはまた自分ことを笑っているのでしょう。
  
 私たちも笑いますよ、あまりの正直さに。でも、この世の瑣末なことを愛おしみながら、それらを全部「言葉」に構築していったあなたの腕力に、敬服いたします。あなたは生来の詩人なのですね。<放浪>はあなたの宝でした。そこから放射されたきらきらした生命力を私たちの声は表現しきれるのだろうか。現代の私たちが遠のけてしまったその生命力を思うと、泣けもするのです。
                            (構成・演出 浅川)


私は宿命的に放浪者である。私は古里を持たない。

出演者から

・生きていれば色々な事がある、とは言え・・。
 文学を指針に荒波人生を生き切った芙美子さん、アッパレ!(石垣)
・初舞台です。林芙美子は縦横無尽に生きた女。そして天性の詩人であった。(市川)




・「放浪」改めて考えてみた。芙美子、さ迷い歩き、真剣に向き合い、貧しい生活の中で、自分を見失うことなくチャレンジしていく姿。さぞかしその時代には飛んでいた女性であったのでは。(岩淵)




・語りの奥の深さを感じつつ、林芙美子の奇妙な、不思議な魅力を少しでも表現できたらと思っています。(江澤)




・初参加です。芙美子さんの自由奔放な生き方を、客席に届く声で表現できるように頑張りたいです。(大場)
・多くの人々が貧困の中に喘いでいた昭和初期、純粋に強かに生きた女。
 フミ子の叫びに共鳴するものがあるなら、彼女が時代を超えて生きている証。
 荒削りな詩の中に言霊はなぜか懐かしく響きますね。(小川)


こんな言葉

・私は白かまんまと言う言葉を聞くと、ポロポロと涙があふれた。
・私は悲しくなると、足の裏がかゆくなるのだ。
・私はお釈迦様に恋をしました。
・チェーホフの吐息は匂わしい手ざわり。

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